鉄欠乏性貧血について
2005.7


貧血のうちで、一番、多いのは鉄欠乏性貧血です。日本人の成人女性の約8%鉄欠乏性貧血です。

鉄の働き:赤血球の主成分はヘモグロビンというたんぱく質と鉄でできた物質です。このヘモグロビンが肺で酸素を受け取ったあと全身の細胞に酸素を運ぶ大切な役目を担っています。ですから鉄が不足しヘモグロビンが減少すると身体の細胞は酸素不足となり、症状としては、疲労感が強くなり、息切れ、動悸、めまい、頭痛など様々です。女性は思春期から閉経直前まで生理的にも鉄欠乏性貧血になりやすいので特に注意が必要です。

 

鉄分の補給:鉄の補給に鉄の固まりを食べてもほとんど消化吸収されません。鉄はヘム鉄と非ヘム鉄に分けることができ、ヘム鉄が吸収され易い形になっています。ヘム鉄は濃い緑の野菜や、動物性食品などに含まれ、特に動物のレバーには多く含まれていますが狂牛病の影響などもありなかなか十分な摂取というのは難しいでしょう。さらにヒトは生まれつき線維素分解酵素を持っておらず、ポパイのごとくホウレンソウを山ほど食べても十分な鉄が補給されないのは有名なお話です。また、ビタミンCは非へム鉄を酸化し吸収されやすくしますので有用で、肉や魚と同時に野菜を食べることが有効です。


鉄欠乏性貧血の食事療法上の注意点

1 もともと鉄は吸収が悪いのですが、濃い緑茶は食事の際には避けてください。(これら飲み物に含まれるタンニンと鉄が結合してより吸収されにくくなります。最近ではお茶はとりわけ禁止はされていませんが、食中、食後の濃い緑茶は控えた方が無難です)

2 よく噛んで食べましょう。また、お酢、柑橘類、梅干しなどの酸味のある食品もとるようにしましょう。(胃酸が欠乏すると鉄の吸収が低下します。胃酸の分泌をよくして食欲を高め、消化吸収を促すことも肝心です)

3 ビタミンCをしっかり補給しましょう。ヘム鉄の吸収が良くなります。

4 禁煙しましょう-ニコチンはビタミンCを破壊します


鉄欠乏性貧血の治療  

貧血になってしまったら食事療法だけで治療するのは困難なことが多く鉄剤で補給することになります。具体的には、経口鉄徐放剤を1日100〜200mg投与します。

フェログロデュメット 1〜2錠

        または フェロミア   2〜4錠

 ビタミンC      3.0g

鉄剤は胃を痛める場合がありますので胃薬も必要ですが、種類によっては鉄の吸収を妨げてしまうので注意が必要です。

急速に鉄量を飽和させる方法としてフェジンなどの注射を続けて行うことがあります。特に胃腸障害などでお薬が全く飲めない人、息切れなどの症状の激しい失血性貧血には有効です。不足量を計算しとりあえず不足量の半分を補い、検査してさらに不足分の半分を補います。このように慎重にならないと、肝臓へのヘモジダローシス、ヘモクロマトーシスという異常蓄積を引き起こしてしまいます。


鉄欠乏の注意点

若い女性に多い鉄欠乏性貧血ですが、体にとっての重篤な疾患の結果として鉄欠乏になっている事例を多く経験しました。胃・十二指腸潰瘍、胃ガン、大腸ガンなどの消化器ガンの進行に伴う出血、婦人科的な子宮筋腫が原因のことが多いので、中等度以上の鉄欠乏性貧血の方は婦人科検診や胃腸の検査を必ず受けるようにしてください。


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