骨粗鬆症について
2005.7


ホントに手指のレントゲン写真で全身の骨塩量が推測できるのか?

当地区の自治体検診では DIP法(MD法)という手指のレントゲン写真をコンピューターで解析して骨塩量を測るという方法が使われていますがこれは、かかとの超音波検査以上に不正確で信頼も薄いのです。有料ですし、できることなら受けないほうがいいでしょう。

当院でH16に経験したDIP法ですが、全身DXA法で骨密度50%以下の高度骨粗鬆症がこともあろうに検診のDIP法では80%以上という正常値を示してしました。

DIP法はあまり信用できない検査のようです。自治体検診ですから、せめて前腕骨DXA法くらいは検査してもらいたいものです。


骨量が減少して骨の中がスカスカになってもろくなった状態、骨の密度が減って 体を支え切れなくなる病気

医学的には、加齢に伴う原因不明の骨量減少とそれに伴う易骨折性や腰背痛などの臨床症状を呈する症候群

どんな人がかかりやすいのですか?

どんな症状がでるのですか?   


骨粗鬆症によく似た状態で骨がもろくなる病気です

骨軟化症     (ビタミンDの不足によって骨の石灰化ができない状態)

副甲状腺機能亢進症(骨からカルシウムが溶け出て尿から出て骨がもろくなる)

癌の骨転移    (安静にしていても痛みが強く激しく持続する)



診断方法

骨量測定装置(前腕部の骨スキャンSEXA法,DEXA法)が現在の検診の主流。特にレントゲン被爆が少なく(約1/100)機種によっては妊婦でも可能、骨密度精度が高く、非利き手の左前腕遠位部の測定が全身の骨量をよく反映する

当院のホロジックDTX-200骨塩量測定装置

かつては整形外科医が臨床症状(高齢や 腰背痛 猫背 寝たきり等)で診断していた

X線撮影(腰椎 骨盤骨 大腿骨)は精度が低く臨床症状などを加味して専門医の読影が必要でした

CTスキャン(腰椎)は 精度の割に被爆量が多い。DIP法、MD法またはCXD法(中手骨レントゲン)は誤差が多く信頼性なし。踵骨超音波は普段の歩き方や姿勢による個人差が大きくご老人の骨密度の測定には向かない。 

さらなる精密検査として腰椎骨盤骨のDEXAスキャン法(全身型)があるが、被爆量はやや多く、技師による誤差がとても多く経過観察には不適当である。現在のところ腰椎に関して現在この方法に優る検査法なし骨MRIも高精度の機器を必要とするため、施設が少なく精密検査としては実用的でない



骨塩量(骨密度)を理解しよう

骨のカルシウム最大量は20歳〜30歳でピークに達し、男性はもともと多くて50歳台まで維持できるが、女性は男性に比べて少なく女性ホルモンの低下し始める40歳後半より急速に減少し閉経を期により減少する。したがって骨密度という概念はカルシウムを骨に貯金する如く、20〜30歳台までにいかに多くの骨塩をためておけるかということが、骨粗鬆症の予防につながると考えられている。

骨塩量の測定の意味は、高齢者の骨粗鬆症の発見治療にも大切であるが、多くの場合ご老人では食生活、運動量から増量させるのは不可能に近い。30歳前後の最大骨量をチェックすることに加え、40歳台の骨減少の早期発見(カルシウム ドック)50歳台での経過観察が将来にいかに大切であるかである。

したがって、どんなに骨塩量が多くても、急に重いものを持ち上げたり、転んだり、無理な姿勢で仕事をするなどの骨折の危険のある行為をしないことなど、日頃の心がけが実は最も大事なことなのです。



骨塩量を増やすために

骨粗鬆症と診断されると、たいていの人はカルシウムをたくさんとるようになります。しかし、実際にはカルシウムを摂るだけでは骨粗鬆症は治りません。 もちろんカルシウムの補給は食事療法の中心になりますが、良質たんぱく質・ビタミンDなども必要です。 体の中に入ったカルシウムをよりよく働かせるためには以下の項目に注意しバランスの良い食事をすること、適度な運動、日光浴も大切です。

もちろん、以下の療法は、思春期前の骨形成にも有用です。すでに学童期以前から骨粗鬆症の予防が始まっているのです。

1)カルシウム食品を多く取る牛乳 乳製品 小魚など)

2)ビタミンD食品を取る (きのこ類、海草、青魚、レバー、バター、卵黄)

3)タンパク質、塩分は摂りすぎないように

4)日光浴をする (ビタミンDを活性型にする)-----活性型ビタミンDがよく使われています。

5)よく運動をする (カルシウム吸収を助ける)

6)その他のカルシウム吸収抑制物(清涼飲料水 炭酸飲料、練り製品、スナック菓子、アルコール インスタント食品 食物繊維 コーヒー 喫煙など)を控える

7)ダイエットをしない(細い若い女性で骨塩量低下例が多い)

8)リンの取りすぎに注意(米飯の食べ過ぎに注意)

注意!

タンパク質は多からず、少なからず。タンパク質のとりすぎは、逆にカルシウムの利用を悪くします。確かに体重の多い人には骨塩量が多いのですが、肥満症の子供は栄養のバランスが悪く、骨密度が低いこともあります。やはりバランスが大事ということです。

食欲が落ちている高齢者では、タンパク質が不足しやすいのです。乳製品に加え、1日3回の食事を規則的にとり、毎食、魚・肉・卵・大豆製品を使ったおかずを1品、とるようにします。嫌いでないなら1日おきの納豆などもいいかもしれませんが、お薬との相性があるのでかかりつけ医にも相談されるといいでしょう。


牛乳の役割

牛乳は最も吸収が良い活性化されたカルシウムを多く含む為、理想的なカルシウム源であります。

1日のカルシウム必要量600mgのうち、少なくとも牛乳200〜400ml(カルシウム200〜400mg)を取るようにしましょう。

コレステロールが高いなど、脂肪分が気になる人は、低脂肪のものを利用します。牛乳が苦手な人は料理に利用したり、他の乳製品(チーズ ヨーグルト スキムミルクなど)を多くとります。

そのほかにも、ビタミンDをとりいれたり、強化食品を利用したり、カルシウムを上手にとることが必要です。

結論として、おすすめは乳製品のカルシウムということです。


食事療法

いろいろな食品からカルシウムをとる(1日600mg必要)
カルシウムの吸収率をあげるためキノコ類などのビタミンDをとる
良質たんぱく質をしっかりとる
インスタント食品や塩分を控える
日光浴と運動でカルシウムの吸収率をあげる
飲酒・喫煙は控えめにする

最近では納豆など発酵食品も注目されている。



運動療法のその他の利点

食べ物からとったカルシウムを骨に蓄えるためには、体を動かすことが必要です。

カルシウムの吸収を助けてくれるビタミンDは、日光浴で作られます。

歩行・ジョギング・エアロビクスなど、適度な運動は骨の新陳代謝を活発にし、カルシウムが骨に定着するのを助けます。

週に3回以上、最低でも30分〜1時間ぐらい行いたいもの。ひざへの負担の少ない運動として、温水プール浴(温水プールで体を動かす)がありますが、平地の歩行もかなり有効です。 (心臓のトレーニングではないので階段歩行や坂道歩行は禁止です)

その他運動により得られるもの

機敏性の増加

筋力増加

協調性能力の増加

ストレスの発散

動脈硬化の予防

転倒しにくくなる(骨折頻度の低下)1992年度大腿骨頚部骨折   男 18,700人    女 57,900人


骨粗鬆症治療の目的   

骨折の予防

(手首前腕部 大腿骨頚部 腰椎圧迫)

腰背痛の改善

骨塩量増加

動脈硬化の予防・・・・内科医としてはここを強調したいのです

    


骨粗鬆症薬剤治療

食餌療法や運動療法は基本ですが、それだけでは改善されない場合 

カルシウム製剤 乳酸カルシウム リン酸水素カルシウム・・・・ 乳製品が苦手なお年寄りや、食事からのカルシウム補給が十分でない場合
エストロゲン製剤(女性ホルモン製剤)・・・・ エストリオール 結合型エストロゲン 閉経後に低下した女性ホルモンを補充する(骨吸収の抑制)
イソフラボン製剤 イプリフラボン・・・・ 骨形成促進作用(骨を増やす作用)もあるといわれており、作用がおだやか
カルシトニン製剤 サケカルシトニン ウナギカルシトニン ・・・・注射薬しかないので週1〜2回の通院が必要だが、腰痛に対する効果が最も期待できる(骨吸収の抑制)
ビスフォスフォネート製剤 エチドロネート アレンドロネート リセドロネート ・・・・破骨細胞の働きを強く抑え、骨量が増加する。
活性型ビタミンD製剤 アルファカルシドール カルシトリオール ・・・・ビタミンDの摂取量が低下している場合や、老化などにより産生が低下している場合、(骨形成促進、カルシウム吸収促進)
ビタミンK製剤 またカルシウムの摂取量が少ない場合にビタミンK2・・・・ 骨形成の増加が期待できる

商品名:グラケー、ダイドロネルなどのお薬も使われ始めましたが、実際に処方した感想ですが・・・・副作用がある割に効能は今ひとつ。 

以上の薬剤に加えて、病状によってリハビリ、外科的治療、その他色々な治療を加えることになります。



カルシウムパラドックスについて(動脈硬化の予防・・・・内科医としてはここを強調したいのです

カルシウムの99%は骨の中にある

骨のカルシウムの1万分の1が血液中にあり、

血液中の1万分の1が細胞内にある

   この濃度の差がエネルギーのもとになる

   カルシウムの摂取不足

       マ血液中のカルシウム不足

         マ骨からカルシウムが溶出

             マ血液中のカルシウム増加

                マ脳や血管内のカルシウム増加

これらの余分な血液内、血管内のカルシウム増加が、高血圧、動脈硬化 糖尿病、尿路結石、ボケ症状などの原因となる。骨粗鬆症の人に成人病や生活習慣病が多い原因の一つとも言われています。

このようにカルシウムの摂取不足があると、逆の作用で血管内にカルシウムが溢れて組織に溜まってしまう。これらの現象をことをカルシウムパラドックスといいます。



カルシウム食品について(吸収されやすい順番)

1)活性型カルシウム   (牛乳 乳製品)-----バランス的には理想的

2)炭酸カルシウム    (カニ エビ 牡蠣や卵の殻)------カルシウム補助食品に使われている

3)リン酸カルシウム   (小魚)------昔の日本人はこれだけでカルシウムを摂っていた?

4)シュウ酸カルシウム  (海草 ほうれん草、小松菜など)-----人によっては尿路結石の原因になる

      5)乳酸カルシウム

       6)グルコン酸カルシウム

        7)アスパラギン酸カルシウム

          の順番に体内によく吸収するが実際には5)〜7)は実用的ではない 

(酸化カルシウム 塩化カルシウムは人には有害)----マスコミの言うようになカルシウムと名の付くものを何でも食べればいいというものではありません


結論

今日からでも遅くありません

   牛乳でもカルシウム食品でも結構です

カルシウムと向き合って、十分量をとるために

      活性型カルシウムを中心とした食生活に心がけましょう


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