酸素吸入の危険性
2005.7
 

酸素療法ブーム

かつて酸素バーというものがありました。酸素を吸いながらリフレッシュ効果を目指すものだったと記憶しています。確か「排気ガス・タバコの吸いすぎによって現代人は酸素が不足していて酸素を吸って元気になりましょう」ということだったでしょうか。

確かに、タバコを吸うようなバカ者は慢性的な一酸化炭素の中毒状態ですから、酸素は不足しているでしょう。タバコを吸う人間の仕事能率が悪いことは科学的に立証されています。さらには欠勤率が多く病気になる確率も高く、アメリカでは優良企業は喫煙者を採用しないのが常識です。労務コストが高いのです。

日本ではバカ公務員に喫煙率が高いことでも分かるとおり、たばこ吸い税金ドロボーをクビにしないといけません。どこかのお国のバカ厚生大臣が「たばこを吸うと生き返る」と発言して顰蹙を買った事実は記憶に新しいところでありますが、そういえばこのバカ元総理は心臓手術をされたそうですね。

話を戻して、「酸素濃縮器」なるものが巷に出回っています。 私は医師として肺気腫・肺繊維症など呼吸不全の方に在宅酸素療法も行っていて、治療に酸素を使っていますが、不足している人に適切な量の酸素を補充すれば寿命が大きく伸びるのは当たり前です。ところが健常人に酸素を吸わせることは医学的に問題があります。高濃度の酸素を健常肺に与え続けると間質に不可逆的障害が起こり危険です。 原因は活性酸素のためであるとされていますが、医学的に不必要で過剰な酸素は、健常人に対して与えないのが常識です。

家庭用の酸素濃縮装置は確かに能力が低く障害が出るという報告はいまだありません。しかし、酸素濃縮装置は簡単に作れ比較的安価です。大量生産すればコストは急速に下がり、科学的知識の無い者が、業者の宣伝に乗せられ、高濃度の酸素を使い出すのではないかとの心配があります。

SpO2を指で測る「酸素飽和度計」も安くなってきました。酸素を吸わずに、空気中で自身の指を測ってみると97%〜98%くらいのものです。もちろん100%にすることは不可能です。試しに酸素を多量に補給しても1%弱しかあがらない計算になります。1%上がったからといって、一般人・健常人が楽になることはありえません。しかしながら、酸素飽和度は変わらなくても活性酸素は確実に増えることになります。

活性酸素について

マスメディアの影響で「体がさびるの」「老化のもとだ」とビタミンCやEが大量消費され、日焼けにも動脈硬化(過酸化資質・酸化LDL)にも悪い活性酸素を敵視し、目一杯避けておきながら、一方では酸素を吸って活性酸素を増やしているのは如何なものでしょう?

運動直後に酸素を吸えば回復が早くなりそうです。プロの選手なら効果は多少証明できるかもしれません。ただし、運動により筋線維は傷つくのは証明済みで、修復が必要なわけですが、修復中に活性酸素の存在は決して良いとはいえないのではないでしょうか。筋肉の疲労物質は主に乳酸だとされていますが、乳酸は疲労を引き起こす悪い物質です。乳酸は悪玉だ、悪玉の乳酸は排除しなければならない、だから酸素を吸って乳酸など殲滅してしまえとなるわけです。

東大の石井直方教授によれば、酸素不足の状態(血管を縛る)で強い運動を行い、その後血管を開放すると成長ホルモンなど、筋肉を発達させるホルモンが大量に出るそうです。酸素を大量に与えて、悪い乳酸など急速に減少させるほうが良いのか、徐々に減少させたほうがトレーニング効果が増すのか、検証は済んではいないのです。朝日的単純思考では医学は解決できません。高地トレーニングで心肺機能が鍛えられるのは周知の認めるところですが、果たして体にいいことなのでしょうか。

話をもどして、少なくとも健常人が酸素を吸って何か良い効果が期待できるはずはないということです。

タバコで酸素不足となった場合には、一見酸素は効果的にもみえるかもしれませんがとんでもないことです。タバコの煙の活性酸素で痛めつけられた気管支や肺胞上皮にさらに酸素を吸って痛めつける。お馬鹿な喫煙者が業者に乗せられているのです。過剰酸素でコレステロールが酸化してくれれば、タバコとの相乗効果で、動脈硬化が加速度的に進むというものです。これなら、喫煙者はいっそう早く死ねるので、厚生労働省の寿命短化作戦に合致しているのでしょうか?

タバコ吸いという人種がとりあえず、長生きしようとすると、酸素を吸っては逆効果でやはり、早期の禁煙しか道は無いというべきです。


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