脂肪肝について
2005.8


定義

脂肪肝とは肝臓の細胞の中に脂肪が溜まっている状態で、100人のうち10〜20人が脂肪肝です。いわば運動不足と飽食の時代の副産物とも言えます。

脂肪肝のほとんどは肝臓の機能に負担をかけることはありません。しかし血液中の中性脂肪やコレステロールが高い人や肥満症の人が多く、近い将来動脈硬化を確実に進行させます。結果として心筋梗塞や糖尿病などの死に至る病気をおこす確率が正常の人の数倍に上がるのです。


分類

1. 栄養失調性脂肪肝
 
1) 過栄養性脂肪肝
 2) 栄養欠乏性脂肪肝
    コリン欠乏 動物実験で肝硬変ができる ペットボトル症候群
2. アルコール性脂肪肝
3. 薬物性・中毒性脂肪肝
   循環器用薬(30年前) リン脂質 ライ症候群:小児 アスピリン
   四塩化炭素中毒
4. 非アルコール性脂肪肝炎(
NASH)/非アルコール性脂肪肝(NAFLD
5. 急性妊娠脂肪肝


検査データの指標

1.血液検査-----GOT GPT r-GTP などの上昇が見られます。中でもr-GTPはアルコール多量常用者にも多く見られます。CHE(コリンエステラーゼ) アルブミンなどが高値になります。      


2.超音波検査---肝実質が白っぽく見えます。 


3.CT検査-----肝実質が黒っぽく見えます。

肝実質が黒っぽいです。

肝実質が巣状にまだらになっている

4. 腹腔鏡-----肝表面が黄色く腫れる。

 

上記の検査で高精度に診断できますが、検診では非侵襲性の超音波検査の有用性が高いようです。最近、体脂肪率と関係のある血中レプチンなども診断の助けや治療の指標になっている。


治療

1.絶対必要なことは原因薬剤や過食、過飲を止めるということ。

2.5Kgの減量-----ほとんどの方が肥満気味なので減量は効果的。

1日の総カロリーを1600〜1800Calに押さえる。一般の肝機能障害の食事指導は高カロリー高タンパクであるので、違いに注目!

3.過栄養:食事療法と運動療法 心身医学的療法

4.薬:EPL錠


予後

たちまちは命に別状はないが、放置すると生活習慣病の宝庫となり脳動脈硬化 脳梗塞 痴呆 心筋梗塞 糖尿病 などで取り返しがつかなくなることもある。


脂肪肝の食事と運動

脂肪肝とは肝臓に脂肪(主に中性脂肪)がたまりすぎた状態であり原因としては肥満、アルコール、糖尿病、栄養のアンバランスなどがあります。まずはカロリー制限によるダイエットと運動不足解消でしょう。

このように肝臓に溜まった中性脂肪を減らす為には、食事療法と運動療法の両者を組み合わせて行うことが必要です。
脂肪を燃やしてエネルギーとして利用するためには、歩行(7000歩)・ランニング・水泳など酸素を十分に取り込んで全身の筋肉を使う運動(有酸素運動)を朝・夕に分けて1日30〜60分行うこと。

山登りやエアロバイクといった心肺機能のトレーニングは、時に関節痛などの傷害を起こしたり、心機能に悪影響を来すおそれがありますので、私の患者さんにはお勧めしません。どうしても続けたいなら主治医とよく相談されることが大切です。

以下に軽運動の利点を併記します。

・ 血圧のコントロール安定化
・ ブドウ糖利用の促進により血糖のコントロール改善
・ 中性脂肪や総コレステロール値の減少
・ 体脂肪率の減少

何といっても一番効果のあるのは

・精神的効果(リラックス・ストレス解消・健康感の保持)


調理される方のための食事療法の具体例:

健康食である糖尿病食に非常によく似ていますが、脂肪肝は夕食を軽くするのがポイントです。

1) ごはん、くだもの、おやつ、ジュースを減らす

・ 一食にご飯はお茶碗に軽く一杯、乾そうめんは一束。
・ 塩辛いおかずはやめてうす味に。
・ 菓子パンはご飯の軽く2杯と同じです。
・ 果物は一日にオレンジ中1/2個が適量です。野菜の代わりにはなりません。
・ お菓子、缶ジュース、ペットボトル飲料、ビタミン・ドリンク剤、アイスクリームなど甘いものや間食の習慣をやめる


2) 以下の油っこい料理を減らす 

(食品)
   しもふり肉、ばら肉、ロース肉、ベーコンうなぎ、さば、さんま、ぶり、まぐろのとろマヨネーズ、マーガリン、サラダ油、生クリーム

(料理)
   天ぷら、フライ、唐揚げ、野菜炒め、ラーメン、クリーム煮、マヨネーズサラダ、油の多い中華料理

(市販の加工食品)
  カップめん、ハンバーガー、クリームスープ、フライドチキン、ポテトチップス、ショートケーキ    


3) たんぱく質、野菜はきちんと食べる
・ 魚、赤身の肉、卵、豆腐、牛乳などバランスを考えて食べましょう。
・ 野菜の一日の必要量は300〜400gです。野菜、海藻、きのこ類をたくさんとって、空腹感を紛らわしましょう。
・ 食物繊維は便通を整え、コレステロールをひっつけて便として排泄します。


4)アルコールを減らす
  禁酒・節酒をはじめましょう!
  アルコールは食欲が増すと同時にエネルギーが多く、食べたものがすぐ脂肪になってたまってしまいます。


5)食べ方、選び方
・ 食事は三食きちんととり、夕食は軽めにする-----これができない人が結構多いのです。
・ ゆっくり時間をかけて(最低1時間以上かけて)よくかんで食べる。
・ 外食はカロリーが高く、栄養のバランスも悪い。中華料理はダメ。
・ 揚げ物、炒め物よりは「ゆでる、煮る、蒸す」料理を。油を使わずに調理するのがポイントです。


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