虚血性心疾患について
2005.6


冠動脈危険因子について

虚血性心疾患は、発症する何年も前から冠動脈の硬化性病変が進行しつづけ、次第に必要な血液量を確保することができなくなった時に、症状や徴候が出現します。このように、この疾患の元凶は動脈硬化性病変ですから、そのような病変を引き起こしたり、更に進行させたりする、いわゆる危険因子を取り除かなければなりません。これら危険因子の多くのものは生活様式に直接関連していますから、危険因子を調整するということは、生活のスタイルを変えることにつながります。

冠動脈(動脈硬化)の危険因子

高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙、高脂血症、高尿酸血症、肥満、家族歴、攻撃性格、ストレスなど

狭心症、心筋梗塞の症状

胸痛が、冠動脈性心疾患の代表的な症状であることはよく知られています。一般には狭心症の症状は心筋梗塞ほど激しいものではありませんが、胸をしめつけられたり圧迫されるような感じに不安感を伴い、胸の中央、胸骨の裏側あたりの割合と広い範囲に感じることが多く、症状の持続は数分から長くても十分以内です。 このように胸痛といわれているものは、必ずしも痛みではなく、上手に言葉で表現することが大変難しいので、医師は胸痛という術語を用いていますが、狭心症の診断においてはこの症状が最も重要な決め手になりますので、実際に感じた苦痛を正確に医師に伝えるようにしましょう。時には痛みが全くなく、息切れや呼吸困難、あるいは失神といった症状のこともあり、更に胃や十二指腸潰瘍かいようのように胸焼けや上腹部の症状として現れることもあります。その他、頸腕症候群のように肩や腕の症状、歯痛、そして稀には頭痛として現れることもあります。

これに対して心筋梗塞では、症状の出る場所は狭心症と同じですが、その性質は突発的で、かつ激しく持続時間も三十分から数時間にも及ぶことがあり ます。しばしば冷や汗を伴い、失神することもあります。胸痛について理解を深めることは、正しい診断に必要なだけでなく、発作を上手にコントロールするのにも役立ちます。症状の正い情報を主治医に伝えるために、以下の点に特に留意してください。 いつも定まった状況で症状を起こし、それがニトログリセリンなどの舌下錠で容易に消失する状態が安定型狭心症で、それ程さし迫った危険はありません。これに対して発作の頻度と強さ、そして持続が増し、ニトログリセリンが効きにくい状態は不安定型狭心症と呼ばれ、これは心筋梗塞の前兆ですから非常に危険です。すぐに入院の上、厳重な監視のもとに治療を受ける必要があります。

狭心症、心筋梗塞の検査

心臓は休むことなく収緒と弛緩を繰り返して働いており、その一回毎に微小な電圧の変化を生じます。この僅かな電気現象を体表面でとらえて記録するのが心電図です。検査としては簡単で、全く苦痛がなく、そして短時間で終了します。この検査は狭心症や心筋梗塞の診断に欠かせません。

しかし、狭心症では症状のないときには心電図に異常が出ませんので、安静時の心電図が正常だから安心とはいえません。反対に、冠動脈性心疾患でなくてもそれに類似の所見がみられることがあり、簡単に心電図のみで診断が下せるものではありません。そのために安静の状態では出ない異常を、運動を加えることによって診断する方法が運動負荷試験です。

この目的のため、年令、体重によって決められた回数の階段を昇降した前後で心電図を記録するマスターの二階段法が一般には用いられてきましたが、現在では自転車エルゴメーターやトレッドミルによる運動負荷のほうが情報量が多いので、これらを用いた検査を行うところもあります。この運動負荷試験によって血圧や心拍数の反応、症状の有無、心電図の所見から総合的な診断が下され、また体力の評価に基づいて日常の運動レベルの範囲も処方されます。もちろん、治療の効果もこの方法によって確かめられます。

労作に関係のない安静時に起こってくる狭心症の診断や治療効果をみるために24時間の心電図を連続して記録する方法があり、これはホルター心電図法と呼ばれています。この方法では小型のテープレコーダやICカードで24時間の心電図を記録し、日常生活の中でいろいろな行動に際してみられる心電図の変化を正確にとらえることができますし、不整脈の数や原因の診断にも有力な検査です。

特殊な検査

狭心症や心筋梗塞に対して、その診断や重症度、あるいは心機能を評価する目的で超音波(心エコー検査)やアイソトープによるシンチ検査が行われます。これは苦痛もなく繰り返して行われるので便利です。

これに対して、冠動脈や左心室をレントゲンで写しだす心血管造影法は、腕や大腿部の動脈から細い管を入れて冠動脈の入口などから造影剤を流し込み映画撮影します。この方法によって冠動脈の障害の部位、程度、左心室の収縮や弛緩の状態、壁の動きなどが正確にわかり、これらの所見を総合して治療法が決定されます。

これは、最も有用な検査ですし、狭心症、心筋梗塞の確定診断やその後の治療法の選択に欠くことの出来ない検査ですが、簡単に繰り返して行えるものではないので、慎重に適応が検討された上で施行されます。心血管造影やアイソトープを使った検査は特別な検査器具が必要ですのでどこでも行えるわけではありません。

その他の一般的な検査

血液や、尿の検査によって、貧血の有無、血清コレステロールや尿酸の状態、塘尿病、腎機能などについて判断されます。また胸部X線検査により心臓の大きさが正確に評価されます。先に述べました危険因子の判断も血液検査でなされます。以上が狭心症、心筋梗塞の症状や検査法です。

治療法

検査の結果に応じて冠血管を開き血行を良くする方向の治療が行われます。内服治療(ニトロペン舌下、アイトロールニトロールRシグマート)や狭窄した冠動脈の血管カテーテル拡張術(バルーン、ステント

以上の保存治療などでも改善が見られない場合、外科的に開胸バイパス手術などが行われます。

実際には、メスを用いない内視鏡的治療が主流を占めたため、循環器内科などが治療を行うので、心臓血管外科医の仕事は激減しています。症例数の少ない病院では安易にバイパス手術など受けないように・・・・・・


ブラウザの戻るボタンでお戻り下さい